羽山 信樹/第六天魔王信長 上・下

文中より。
第六天とは、欲界(欲望の世界)の頂点のことである。第六天の魔王とは、正法をさまたげ、悪の道を進む、悪魔の王のことをいう。極限の悪魔である。
信長は、この言葉がいたく気に入っている。
己の生きるあかし、いわば存在の原理のようなものが、この言葉に尽くされているような気がするのだ。


自らを魔王と称し、人々に恐れられ、どんどん孤高になっていく信長。しまいにゃ躁鬱チックな感じになってきて、信用できるのは、幼いころに分かりあった、竹千代(家康)と、秀吉のみとなっていく。そんな信長がなんか切ないっつうか、文中でも家康が思っているんですが「あの人は独りなのだ」と感じたよ。
この信長の孤独感の表し方がじわじわ来て、家康や秀吉に感情移入していっちゃうんだよね。その二人は、この孤独な魔王の魂を癒そうと影でささえ、無理な命令も聞き入れ、信長を受け入れようとするんだよ。
逆にこれができないのが光秀。光秀も同様に信長を慕ってはいるんだけど、イマイチ相性が悪い。そんなこんなもあって、本能寺の変へ。
信長の一生もののストーリーにしては、文庫2冊じゃ短いかな?と思うけど、無理ない話の展開。そして、そんな心理描写を織り交ぜながらも、史実に基づくエピソードはちゃんと絡めてあるので納得のいく話でかなり面白かった。
ヒーローすぎず、残虐すぎず、強すぎず、弱すぎない感じは、実際の信長はこうだったんじゃないか?とさえ思った。

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